蕎麦派から饂飩派へ―讃岐うどんとの出会い

 東京は今やすっかり讃岐うどんブーム。早い旨い安いと三拍子揃ったファストフードの新顔として、吉野家と鎬を削る戦いを見せてくれるかも知れません。
これも景気の低迷の賜物だとしたら、不景気もまんざらではないと思ってしまう私は楽天家過ぎるでしょうか。
 さて、私が讃岐うどんにハマったのは4年前。それまで完全なる蕎麦派だった私は「うどんなんて所詮ただの小麦粉じゃん」などと蔑んでさえいました。ところが、とある雑誌の讃岐うどん特集の写真を見て、その艶やかでエッジの立った麺の美しさに魅せられた私は居ても立ってもいられなくなりました。
 そして先ずは銀座にある優秀な讃岐うどんの店「さか田」の暖簾をくぐり、基本の生醤油うどんをいただきました。「うまい〜っ! カチカチする歯ごたえ、これが讃岐うどんってものなのね☆」・・という印象と共に、私は徐々に讃岐うどんの魅力に溺れていくことになったのでした。
 そんな私の讃岐うどんへの熱い思いに拍車をかけたのが『うまひゃひゃさぬきうどん』(さとなお著/コスモの本発行)でした。(ほんと、コレ読むと誰でも讃岐に行きたくなるってば!)
そうして讃岐うどんの魅力に、いや魔力に取り憑かれた私は、早速GWの讃岐うどんツアーに向けて、香川の道路地図を片手に綿密な計画を練り、“正味二日間で何軒回れるか”という前代未聞の勝負に出たのです。
 夜中に東京から車で出発、途中愛知の実家で仮眠をし、5時に再出発。お昼に高松に到着すれば、その日に5軒くらい回れるだろうと目論んでいました。・・・が、恐るべしGWの渋滞。京都を抜けるのに数時間を要し、高松到着がなんと16時半。のっけから予定遂行不可能を強いられることになりました。
 そもそも讃岐うどんの店は、地元の人相手に、朝だけとか昼だけ営業しているような、要するに“うどん屋”ではなく製麺所だったり米屋だったりする所も多く、そういう“うどん屋”じゃない処の方が、えてして旨いのです。そんなわけで一晩目は、手始めに高松付近でいわゆる一般のうどん屋さん3軒をまわり、「まずまず…」な感想とともにホテルで計画の練り直しをしたのでした。
 さて、翌日は朝7時から、今回の“ベストオブ讃岐うどん”最有力候補の「山越」をトップバッターに、ガンガン攻め捲りました。GWということもあり、どこも行列! こんなにブームになっていたなんて、、、と改めて思い知らされました。さすがに品川ナンバーはあまり見かけませんでしたが、関西あたりからは随分来ていました。
 「山越」・・・予想を上回る感動の旨さでした。讃岐まで来てよかった…、生きててよかった…、と冗談じゃなく思いました。ぶっかけも、名物釜玉(釜揚げうどんにに生卵を混ぜて食べるとこれまた美味! 卵かけご飯が好きな人なら絶対気に入ります)も、口にした途端、今までのうどんの概念が覆される思いでした。コシの強さは言うまでもなく、小麦粉の香りといい、塩加減といい、どこをとっても申し分のない、どんな旨い蕎麦にもどんな旨い手打ちパスタにも優る素晴らしいものでした。
 そして「宮武」。もう私はここのうどんの虜になりました。「山越」の均整のとれた麺はもちろん魅力的ですが、しなやかでありながらも逞しい、そんな男性的な魅力にうっとり。ああもうこのうどんの為になら全財産貢いじゃうわ・・って感じでした。(あーそういえば関係ないけど最近オトコの趣味も変わったの〜★ 華奢で色白好みだったんだけど、やっぱり逞しさも必要よねぇ… ^_^;)
 結局この日は8軒、一日で8玉のうどんを平らげました。
 まあうどん8玉だけなら、私の鉄の胃袋にしては大したことないかなとも思えますが、お店の片隅に山盛りに積まれている天ぷらを目にすると、ついついつまんでしまうんですよ、これが。高級な天ぷらとは違って、衣たっぷり重量感たっぷりの天ぷらは、ゲソとか蛸とか竹輪とか蓮根とかバラエティにも富んでいて、讃岐人の日常食に変化をつける為の必需品だともいえましょう。おかげでお腹にズシッときました。
 そして、大抵の店では大(3玉)・中(2玉)・小(1玉)と注文することになっています。「宮武」「山越」「谷川米穀店」あたりでは、私も本当は、大!と叫びたいところだったのですが、如何せん次が控えている為、小で我慢せざるを得ないのが辛かったといえば辛かったです。。。
 翌日は京都に向かうスケジュール(ここでもやっぱり食三昧)だったので、午前中に超特急で3軒回り、正味一日半で14軒を巡る超ハードツアーは、念願叶った満足感と、それでもまだ食べ足りない多少の心残りと、4kgの体重増加の後悔はないがちょっぴり悲しい気持ちとともに、終了しました。(あーコレ書いていたらまた行きたくなっちゃった! 早く続編執筆の為に再訪したいです〜)
 14軒を食べ比べてみて、かなりのレベルの高さに感心したとともに、一口に讃岐うどんといっても、麺の太さや弾力、色艶、出汁や醤油、薬味に至るまで、多種多様であることも判り、奥深さをひしひしと感じました。
 甲乙つけがたい(記憶もだいぶ薄れている)中で、無理矢理Best 10を挙げるのなら、
1.「宮武」2.「山越」3.「山下」4.「谷川米穀店」5.「山内」6.「小縣家」7.「田村」8.「宮川製麺所」9.「中村」10.「長田」 といったところでしょうか。
 客観的には「山越」の完成度がBest 1かな…という気もしますが、個人的には「宮武」の噛みしめれば噛みしめるほど口内幸福度最高潮をもたらす素晴らしい麺と、サイドメニューの天ぷらの迫力に“マイベスト讃岐”の称号を与えます。
 そして、番外編として「ジャンボ」の極太・激堅麺には“抱かれたい麺No.1”賞を捧げたいと思います。

 東京でオススメの讃岐うどん屋を挙げるなら
「さか田」〔銀座〕03-3563-7400
「さぬきのうどんや」〔曙橋〕03-3350-9688
「はなまるうどん」←2002年の渋谷店オープンを皮切りに、最近次々と店舗を増やしている讃岐のチェーン店。感動するほどではないが、価格も讃岐価格で文句ナシ!

 さて、家で美味しいうどんを食べるなら、断然カトキチの冷凍讃岐うどん。四国出身の人に訊いても、向こうではどこの家庭の冷凍庫にも必ずと言っていいほど常備されているらしいです(大阪の家庭に必ずたこ焼き器があるようなもんですかねぇ)。たっぷりのお湯で茹でて、しっかり冷水(氷水)で絞め、葱とすだち(お好みで大根おろしや生姜も)、そこに醤油をたらせば、とりあえず讃岐気分は味わえます。釜玉もしくは冷水で絞めた麺に生卵を混ぜてもイケますよ。